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東京国際映画祭 レヴュー その2

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「Happy Go Lucky」(イギリス、2008年)

イギリス出身のマイク・リー監督の4年ぶりの新作です。
前作はベネチア映画祭で金獅子賞を取った「ベラ・ドレイク」でした。

1950年代のイギリスで違法とされていた堕胎治療を行なう一人の女性を描いた前作の極限のドラマと比べて、今回は同じく一人の女性に焦点を当てつつも、現代に生きる未婚の30歳女性をめぐる、少しほろ苦いコメディ/ドラマでした。

主演のサリー・ホーキンス、とても良いです。
本当にそこらにいそうな親近感を持たせる女優さんで、かわいらしく好印象を抱かせます。

しかも今年のベルリン映画祭で銀熊賞(女優)を取っただけあって、素晴らしい演技です。IMDBで読むかぎり、どうやら本人の性格もハッピーで楽天的だとのことなので、素で演技ができていた可能性が高いですが、笑顔を振りまき、おどけてみせる数々のカットの中にも、時たま空虚感であったり悲しさであったりと、台詞ではないところで微妙な表情でうまくメッセージを伝えているのはポイント高いです。

物語の構成やストーリーの進行は、わりとイギリス映画にありがちな「出会い」によって次々と局面を迎えます。中盤から後半にかけて、テーマである「ハッピー」の定義を視聴者とともに模索するかのように、さまざまな感情の動きを見せたり、主人公とはまったく異なる信条を持つ登場人物とのインタラクションが物語を色づけます。

特に、すでに俳優としてのキャリアの長いエディー・マーサンとの絡みが素晴らしいです。エディー・マーサンは、いわば悲しみ、怒り、孤独など、主人公とは完全なる対極に位置しているため、強いコントラストの中にハッピーであることが極めてポジティヴに映るだけでなく、じつはそういった「理由なき悦楽」とも呼べる心性が必ずしも誰もを幸せにするとは限らないという事実も演出しています。

視覚的にもとてもカラフルで、見ていて楽になりますし、小気味良い高揚感を誘います。
肯定的であることが結果として幸せを呼び込むという、シンプルでありつつも現代人が忘れがちな大切な気持ちを再認識させる良い映画でした。

http://www.happy-go-lucky-movie.co.uk/

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